ひさしぶりに母とのできごとのお話です。
今のホームに三年近く入居していた母ですが、この度、別のホームに転居することになりました。
コロナの影響もあり、面会や外出に制限がかかっていたので、退去から入居の間の一日の間に、一晩ウチに一泊してもらい、翌日は、母がひとりで暮らしていた今は空き家の実家に連れて行き、その夕方、新しい施設への入居、という少しハードかなと思う計画を実行しました。
ウチに母が来るのは何年ぶりでしょうか。
いきなり動かされ連れて来られた母が、ウチに着いてひと息してから、私のパートナーが話し相手になり、母が今きっと気になっているだろうことを明確にするという作業をしました。
パートナーと母は、タイプ傾向が合うからか、母はパートナーの話は良く理解します。
パートナーは、母がどんなことが気になって、どういう説明をして欲しいのかを察して話をするので、お互い交流がスムーズなのでお任せます。
母は、うんうんと頷き納得しているようでした。
横耳と横目で、参加する私は、母が話を聞きながらも、つぶやくように、別の同じ話を何度もしているのが気になりました。
話の内容
『元気が無くなってきた入居者の家族が、最後は家で…とウチにに連れて帰ったら、入居者さんは元気になっていった。すると家族は、長生きして困ると言ったんだそう。その話を聞いた時は、笑い話で聞いてたけど…』
この話は、以前から電話でも何度も話していて、今もこの話を短時間に立て続けに5回くらい繰り返したので、何があるのかなぁと思い、聞いてみました。
すると…
長生きすると周りに家族に迷惑かけるんじゃないか、という事を気にしていると言いました。
母の本音は本音は…
「長生きしたい」のでした。
そうだったんだ、その事を気にしてたんだ。
それを言えずに、ずっと心に留めておいたのか。
私は、「長生きしたい」と声に出して言ってもらいました。何度も繰り返し「長生きしたい」という母は、さらに大きな声でハッキリと「死にたくない」と、締めの言葉のように言い切りました。
長生きしたいし、死にたくないんだよ、母は。
母は、家族に迷惑かけたくないという思いから、長生きしたい、死にたくない、という本音を誰にも言えず、ただひたすら抑えていたのです。
そういえば母は昔から「子どもたちに迷惑だけはかけたくない」と口癖のように言っていたことを思い出しました。
その頃は、「そー言いながら好き勝手して、十分迷惑なんだよ」って、冷たく言い放っていた私の言葉も思い出し、胸が苦しくなりました。
母を受容し共感しながら、やり取りを大事に交わしたあとで…
「あなたは家族に迷惑をかけていない、私は長生きして欲しいと思ってるよ」と伝えました。
パートナーは、「長生きしてくださいね」と言いました。
母は少し俯き、しばらく何も言わず黙っていました。
そしてまた、お喋りが始まりました。
母の顔には少し赤みがさし、表情は柔らかくなり、繰り返していた話はピタッと止まり、その後しなくなりました。
そして翌日の、実家へ行き、夕方新施設へ入居という行動の中で、母は全てではないけれど、面持ちが落ち着いた様子でした。
わたしは、ウチに一泊のほんのひと時、母の本音に立ち合えたことを、良かった(相応しい言葉が見つからないので)と、思っています。
パートナーの母への寄り添いに心から感謝しています。
そして、親の事となると、今だに冷静さは欠けます。電話で、繰り返す話を聞きながら、またその話?もういいよ!と半分聞き流していたんだもの…
母との関係性は、まだまだだな、と。
切なく複雑な思いや気持ちを抱きながら、わたしができる方法で、母の様子を見ながら関わっていこうと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。